第三章 磔

動けない、縛られている。両手を高手に、足首には鎖がかけられている。たったそれだけであるがほとんど自由は利かなかった。 正面には固定式のビデオカメラがセットされその横に置かれたモニターには、きれいな真紅のドレスで縛られた自分の姿が映しされ否が応でも自分のおかれた状況を理解せずにはいられなかった。「どういうことですか!」先程までの男が変貌している。男(陰湿)はにたにたと笑いながらカメラをセットしている。さらに強い口調で言った。「説明してください!」   


「気の強いお嬢様だな。育ちがいいんだからもっと上品に言わないとだめだよん」陰湿はこれから始まる淫靡な宴を考えてうれしくてたまらず、ふざけた口調で言った。しかしそのことをお嬢様は知る由も無かった「俺の本業は写真を撮ることでね、ちょっとお嬢様の縛られている姿をカメラに収めたいだけなんだよ。さしずめ『囚われの令嬢』ってところかな。まあすぐ終わるからおとなしくしてなって。」 「馬鹿なこと言わないで下さい!写真なら撮ってかまいませんから、これをはずして下さい。」「わかんねーお嬢様だな。縛られていることに意味があるんだって。 それにしてもこんなかわいい良家のお嬢様がこんな豪華なドレスで囚われているのは美しい姿だのう。へっへっへ」






しばらくシャッターの音が続いた。男は一服しながらお嬢様をじろりと眺めそして「よく見たらお嬢様の着ているミディドレスはスカートの部分が4段になってるね。それは長さが調節できるんじゃないのかい?」最初男が何を言っているのかわからなかった。この下品で知性のかけらもない男の口からミディドレスという言葉が出たのが意外な気がした。そして引っかかった言葉「調節?」「そうだよ、3段でもいいんじゃないのかい?」男はまじめな口調で言っている。

男のペースにはまっていると思いながらも、自分のドレスのスカートの部分を見てしまった。(確かにスカート部分は4段の同じフレアの形のデザインである。そんなことを意識してみたことは無かったが確かにそれぞれがスカートといえなくもない。但しそれはあくまでもそのフレアの形のことであって、長さを調節するために作られているはずがない。しかも高手に固定されて今は膝丈となっているそのスカートの一段目を取り払われるといきなり20センチ以上上がってしまって、このドレスとは不釣合いな超ミニスカートサイズになってしまう。この男はそれがわからないのだろうか?)

「だからさ、次は3段で撮ろうよ。」  返事に窮した。  陰湿はいったん何かを探しそして戻ってきた。その手にもっていた光るものそれははさみであった。




「だからさ、次は3段で撮ろうよ。」  返事に窮した。  陰湿はいったん何かを探しそして戻ってきた。その手にもっていた光るものそれははさみであった。